汽水行き

隣の芝生は、すこぶる蒼い

デート、失敗。

 

  この間、チキンな自分は日本酒をがぶ飲みして女性を遊びに誘うという荒療治を実践した。そうでもしないと、いつまでも誘うことができないだろうと思ったから。とても緊張した。ここ最近で一番緊張した。 

 記憶をなくすほど飲んでいたわけではなかったから、送るときにはしっかり自我を保てていた。自我をなくして他人に電話やらLINEやらを送るほど厄介者ではない。

 

 誘ったお相手は、中学か、高校か、どこで出会ったかは内緒の友達。もしかしたらバイトかもしれない。大学には男友達すらも居ないからまず無い。

 何かについて語っているわけでもない、他愛のないというのもおこがましいほどのLINEを結構長いことしているけど、2年か3年か、実際に会ったのはそれくらい前。一年二年前くらいから誘おう誘おうと考え何度も怖気づいていたら、コロナが来て、ちょっと去って、と思ったらまた第4波なんかが来たりして、もう大学3回生になってしまった。時間が過ぎるのは早いですねなんて言い始めると、ますます早く歳をとってしまう気がしてならない。

 

  そんなタイミングで、女性を遊びに誘った。デートに誘ったと言えるほど、気概のある人間ではない。遊びに誘った。

 

 行き先は水族館。

 自分の中では、水族館に行くことに特別な意味や効果は定義されていなかったのだが、そういう意味があるというネット記事もあったり友達からも指摘されたりした。どちらにしろ、「そういう意味を含むかもしれない」ということを考えられなかった時点で、僕の恋愛偏差値の低さが露呈する結果となった。

 人生100年、察していこう。

 

 誘いの文を送ったのは、ちょうど2回目の緊急事態宣言中の2月中旬ごろ。3月の終わりには宣言も解除されているだろうと思って、「3月の26日、暇だったら水族館行かない?」と聞いた。日付を指定したのは、かなり先の日程での提案だったこともあって、しないと断るときの理由づけが難しいだろうと思ったから。指定があればその日忙しいことにして相手が断りやすいかなと思っての配慮。

 

 うーん、キモイ。こういうエントリは、やっぱり深夜1時を回ったくらいのタイミングじゃないと書けない。書いていられない。

 

 期待と不安を含蓄した餡を配慮で包んだLINEに対して返ってきたのは、「暇だったら」という回答。どっちなのかはわからないけれど、チャンスは無きにしもあらずといった具合。

 まだまだ先の話だから、3月の誘った日までには言及があるだろうと思い、とりあえず流した。。ちなみに、誘いも回答も、どちらも普段からしていた他愛もない内容のラインに付随して送られた。

 

 緊急事態宣言は、2回くらい延長された。26日を指定したのはなんとなくだったのだけど、結局宣言が解除されたのは22日だった。ギリギリセーフ。

  

 誘いに対してのリアクションは、1週間前の19日になっても来ていない。それでも、他愛なきLINEは続いていて、僕のバイト先に後輩ができたみたいな話をしていた。

 水族館に対してのリアクションはない。

 

 

 前日、25日。宣言が解除され、バイトの帰りにしばしば立ち寄っていたラーメン屋の営業が再開したので、たんまりニンニクの入った臭いラーメンを食べた。

 どうしてラーメンを食べに行ったのか。単に緊急事態宣言が終わってようやくラーメン屋が再開したのが嬉しかったというだけである。口が臭くてとても女性には会えない状況を作り出して、少しでも無念を晴らしたかっただけである。

 

 帰ってからレモンサワーを飲んだ。記憶を無くすような量ではなく、350ml一缶。酒をいくら飲んだとて、状況が改善することはないし、ただ次の日の体調が悪くなるだけ。リビングで、父親とおしゃべりをしながら飲んだ。

 3月の僕は、毎日早く寝て早く起きてと、割と規則正しい生活をしていた。なので、この日も0時には携帯を充電スタンドに置いて床についた。悪夢を見ないといいなと思いつつ。

 

 

 26朝、起きて携帯をチェックしたら、僕が寝てすぐの0時半頃、「26日どうなったの?なくなったの?」というLINEが来ていた。26日は、僕が水族館に誘ったときに指定した日。当日。当日の朝になって、初めてリアクションを受け取ることができた。

 寝起き5分以内の温まりきっていない頭でなんとか文章を組み立て、とりあえず謝り、「暇だったらで終わってたから、行けないもんだと思ってた」と言い訳も添えた。

 

 どうやら、僕がすやすやと寝ている中、3時位まで起きて返信を待っていてくれたらしい。それがその日に限ったものではない日常的習慣的な夜ふかしであることを切に願いつつ、もう一度謝った。

  「聞いてくれたら行けたのに笑」と言われた。「早く言ってくれたら行けたのに」と思った。

 

 結局、というかもちろん、その日に水族館に行くことは叶わず。そりゃ、口も臭いし、そもそも3時まで待った後に他の予定を入れたらしい。

 

 しばらくして、友達にこのことを相談した。僕の抗弁は、「リアクションがない→お断りということだと思った。だから、その状況からもう一度『26どう?』と聞くほど心臓が強くない。」というもの。

 以下、決して広くない交友関係をフルに活用し、なんとか得た意見である。

千葉県20歳男性「もう一度聞くべきだった。俺なら聞いた。」正しい

千葉県20歳女性「向こうの反応もわかりにくいよ笑。不思議ちゃんだね。」正しい

京都府19歳男性「おそらく彼女は聞いてくれるのを待っていたことでしょう。それをあなたはないがしろにし、踏みにじり、睡眠時間を蝕みました。きっと可愛いお洋服を着る準備などしていたことでしょう、そんな労力をすべて無駄にした野沢くんの罪は重い。」正しい

愛知県20歳女性「彼氏にやられたら嫌な気持ちになると思う。あと、多くの女の子は誰に会うとか関係なくお出かけするなら可愛くしようって思うよ。自惚れるなカスが。(原文ママ)」正しい

千葉県18歳男性「笑(肉声ママ)」正しい

  すばらしき交友関係に恵まれた人生。乾杯。

 

 今は、リスケを試みている。だが、そもそも相手の返信がすごく遅いこと、水族館が多く存在する東京都にまたしても緊急事態宣言が発令されること、どっこい千葉にも蔓延防止等なんちゃらがでていることなど、何枚もの壁が立ちはだかっている。

 だから、このまま誘いは霧散して、頓挫エンドな予感がする。だから、デート失敗。

 

 

 

 人と関わるのって、難しくない?

 

 

 多分続かない。